思い出の時計修理:その①

当店トライフルを西荻窪にオープンして20年が経ちました。
おかげさまでたくさんの方々から時計修理のご依頼をいただき感謝していますし、ご依頼いただく方々の時計への想いに触れられるのも嬉しい日々です。

ほとんどがご自身の愛用品の修理、メンテナンス、オーバーホールのご依頼になります。
次いで多いのはご両親やご親族、ご先祖さまの使用されていた時計の修理、復元のご依頼です。

修理でお預かりする際「この時計は〇〇の記念で贈られたもので、、、」といった由来を伺うこともありますが、持ち主の方から時計の由来や歴史を伺がわないうちにご家族に引き継がれることもわりと多いのです
今日はそんなことについて書きたいと思います。

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例えば、ご実家の整理をしている際に見つけたけれど、どういったものかわからない、という古い掛け時計。

時計の製造年代、生産国、メーカー、さらに外装の変化から室内環境や使用状況など時計の歩んできた歴史が紐解けることもあります。
そういった時計の情報をお客様にご説明させていただくと
「そういえば先先代がこんな仕事をしていた」
「時計に書き込まれた名前は、あの◯◯さんだ」
「昔、その場所で暮らしていたと聞いたことがある」などなど

時計がきっかけになって思い出がどんどん蘇ってくる場に立ち合わせていただいた時はとても嬉しいし、心なしかお持ち込みいただいた時計が輝きだすように感じるのです。
一歩間違えば、そのような事すら忘れ去られて消えてしまっていたかもしれない時計とそのご家族の絆が繋がった時には、その場にいるみんなが幸せな気持ちになるのがわかります。

「ずっと受け継いでいきたい」そう思う気持ちが深まることで、修理への想いも強くなります。
たかが「時計」、かもしれません。
でも、そこには値段では測れない、大切な家族の記憶が刻まれています。
そう考えると、この時計は単なる道具ではなく、家族の記憶と歴史を紡ぐ“宝物”なのかもしれません。